先ごろ,東京国際フォーラムにおいてTHE FIRST ICOI ADVANCED IMPLANT SYMPOSIUM が開催された。ICOI(International Congress of Oral Implantologists)主催による日本で初めての同シンポジウムでは,招待講演が8演題のほか,一般口演34演題,ポスター発表20演題の会員発表が行われた。小紙では,2日間にわたり開催された同シンポジウムの概要を連載で報告する。
患者からの審美的要求の高まりのなか,オールセラミック修復が増加している。ニューヨーク大学歯科学院助教のChristian F. J. Stappert氏は,その審美性に加え強度,耐久性などの機能性も向上していることを,データを示しながら解説した。
チッピングと疲労破壊に注意
従来,ポーセレンは前歯部を中心に修復物に用いられていたが,近年は臼歯部修復まで用いられている。オールセラミック修復は審美的にも理想的な補綴処置であると考えられる。
ポーセレンは,シングルクラウンの5年経過症例において,従来ゴールドスタンダードとされてきたPFMクラウンを上回る良好な成績を示している。
上部構造の5年経過症例においてポーセレンのチッピングは6%で,10年間の天然歯のチッピング率とほぼ同程度である。インプラントは咬合力をコントロールしにくいため,天然歯に比べてチッピングが多くなると考えられる。
近年は,フルマウスの補綴物でジルコニアを使うケースが増えているが,ジルコニアクラウンでは最大で30%のチッピングが生じる報告もある。
また,ジルコニアは強靭であるが,疲労破壊に注意しなければならない。長期的な疲労が加わることで,強度が50%近くまで下がってしまう報告もある。研究の段階で材料の疲労試験をしていないことが多く,口腔内に装着して問題があれば対処することが多いが,事前に疲労試験を行うことが必要だろう。
そのほか,ストレスがかかっている部位から疲労破壊するセラミックも散見する。ほとんどの製品に圧縮強度が表示されているが,内部にもストレスが加わっていることを忘れてはならない。
審美性と強度を両立したセラミック
審美的な観点からは,透明感などに優れた単一素材の陶質材料がよいと考えられるが,その強度からは小臼歯や前歯部にとどめるべきだと考えられる(図)。また,アルミナはエステティックゾーンにも適した材料であるが,強度を考慮すると,臼歯部での使用は難しいと考えられる。

それに対して,ジルコニアは透明度を70%程度遮断してしまうためエステティックゾーンでは審美面ですすめられずチッピングの可能性もあるものの,強度は非常に高く臼歯部の補綴物に使える唯一のポーセレンであると言える。
アバットメントに関しては,ジルコニア・アバットメントは審美的にも優れており,日常臨床で繁用されいる。現段階では長期経過報告はないが成功率が95~100%という報告もある。
フレームワークは,比較的アルミナのほうがチッピングは少なく,長期的耐久性が高いと言える。これに対してジルコニアは,初期にチッピングが生じることが確認されており,熱膨張が関係しているとも考えられる。
樹脂系セラミックは,審美性は高いが強度が低いうえにボンディング材の影響を受け,強度を補強するためには厚さを増すかボンディング材に頼らなければならなかった。アルミナやジルコニアの出現は高い審美性と強度の両立を可能にした。
これにより,アルミナは小臼歯,前歯部への使用が推奨される。また,ジルコニアはチッピングを防ぐことができれば,全顎に使える材料である。ジルコニアを使用するにあたっては,チッピングを防ぐために,咬合調節を行うことが重要で,咬合調節後はしっかりと研磨しなかった削合面からのポンピングエフェクトにより,チッピングを誘発してしまうことがある。
中華口腔医学会会長の王興氏は,骨欠損症例に必要とされる骨量を補う処置法として,牽引器を用いた垂直的骨造成法を紹介した。
骨欠損症例の新たな解決法
インプラント治療で直面する大きな問題は骨欠損である。骨欠損の原因として,腫瘍摘出,外傷による骨欠損,加齢で生じる歯槽骨の吸収,腫瘍摘出後に骨再生を行っても骨量が不足しているケースなどが挙げられる。このような症例には,骨移植または骨再生を行う必要がある。1990年代から臨床応用されてきた垂直的骨造成法は,こうした症例に対して新しい解決法を提供する。組織に一定の張力を加え,組織の再生原理に基づき,骨の牽引から骨再生を促す造成法である。現在では顎顔面領域においてさまざまに臨床応用がなされている。
歯槽骨の欠損が見られる場合には,骨移植も選択肢の1つである。しかし,骨移植は自家骨を採取することから侵襲性が高いため,患者には受け入れがたい。また,骨移植を行った部位を補うために十分な軟組織を確保することが難しく,移植骨が吸収される欠点もある。
垂直的骨造成法では,このような難易度の高い骨移植を行う必要はなくなる。骨再生とともに骨周囲の軟組織も延長してくるほか,再生された骨は吸収が非常に少ないという利点がある。また,垂直的骨造成法により,歯槽骨の高さは10~20mmまで延長することが可能である。
1996年末~2004年末までに36例に垂直的骨造成法を行った結果,3 例で軽度の合併症が見られた。1例は下顎下縁骨の骨折を起こし,2例は慢性の局所的な感染症を起こしたが,その後の処置によってインプラント補綴まで行うことができ最終的に良好な結果が得られ,36例中失敗は1例もなかった。
利点と欠点を認識して治療選択を
垂直的骨造成法と骨移植の治療選択では,1回の手術で完了できる場合には骨移植が好ましい。
骨移植による治療が不可能な患者に対しては垂直的骨造成法を行うことが多い。その利点として,(1)手術法が簡単(2)合併症,骨吸収とも少ない(3)必要とする高さまで骨再生を誘導できる(4)骨再生の過程で軟組織も延長してくる――などが挙げられる。
一方で,欠点も認識しておかなければならない。垂直的骨造成法では骨を牽引器で毎日1mmずつ牽引するため,20mm延ばすには20日間を要する。また,新生骨は骨質が非常に軟らかいため3~4か月,骨の成熟を待たなければならず,治療期間が長期にわたる。その間,患者は口腔内に牽引器を装着し,2次手術ではとり外すため治療費が高価である。すべての患者に適応できるわけではないといえる。
日常臨床で垂直的骨造成法を必要とするケースは少なく,必要な症例は約1%程度と推定される。しかし,この1%に該当する患者にとっての利点は非常に大きく,意義のある治療法であると考えられる。
ニューヨーク大学歯科学院助教のGiuseppe Cardaropoli 氏は, 抜歯窩の治癒過程における骨吸収を生物学的な見地から観察した研究を紹介し, 骨吸収を抑制してインプラントの抜歯後即時埋入を成功に導く要因について検討した。
インプラントで骨吸収は防げない
抜歯した後には,骨の水平的な形態と垂直的な形態の両方を保存する必要がある。抜歯窩においては,抜歯窩内の骨の形態と抜歯窩外の骨の形態を考える。
動物実験の研究で抜歯窩の治癒過程を調べたところ,抜歯窩の内側では垂直的に約1mm骨が吸収していた。外側では,頬側と口蓋側の変化が見られ,舌側の骨は安定しているが頬側は2.3mm程度骨が吸収していた。
ヒトについても治癒過程を調べ,歯槽頂の計測をしたところ,歯槽頂は抜歯後に約50%失われ,大臼歯部のほうが小臼歯部より大きく吸収していた。このことから,抜歯後に待機しすぎると骨が吸収してしまうということが言える。
インプラントを埋入することで頬側の骨を保つことができるのかを調べるため,動物実験でインプラントを埋入した。抜歯しただけの箇所,歯の保存されている箇所とインプラントを埋入した箇所をそれぞれ比較した。その結果,ボーンロスはほぼ同等で,抜歯後3か月を経過すると,どのような処置を行っていても骨は吸収しており,インプラントを埋入することによって骨の吸収を抑制することはできないことがわかった。さらに,骨の変化もインプラントを埋入した箇所と抜歯しただけの箇所を比較した結果ほぼ同様であった。
ヒトについても抜歯をしてインプラントを埋入した結果を調べたところ,骨は頬側のほうが舌側より大きく吸収しており,インプラントによって骨の吸収を止めることはできないことがわかった。これは生物学的な作用であると考えられる。
フラップレスとバイオマテリアルは有効
束状骨が失われることで,抜歯後の骨吸収が大きくなるとも言われるが,抜歯後にどれだけ束状骨が残存するかを計測したところ,8週後にも吸収はしているものの残存していることが確認された。
束状骨は抜歯窩の歯根膜の近くにあるが,20μmほどしかない束状骨が3mmの骨吸収に関係しているとは考えられず,束状骨は骨の吸収には関係していないといえる。
また,フラップの有無による骨の治癒を調べたところ,フラップを開けたほうは2mm,開けないほうは0.6mm吸収しており,開けないほうが骨吸収は少なかった。
即時埋入に関しては,骨吸収に表面性状はあまり関係がなかったが,フラップを開けるか開けないかという手術方法については,開けないほうが骨吸収は少ないことがわかった。ただし,すべてのケースがフラップレスで行えるわけではなく,まだ長期的な臨床結果が報告されているわけではないので注意する必要がある。
どのような材料を使うと骨吸収を防ぐことができるかを調べるため,グラフト,バイオスコラーゲンとコラーゲンスポンジで骨吸収がどう異なるかを比較した。結果は,バイオスコラーゲンを抜歯窩に使った場合,骨吸収が少なかった。これにより,バイオマテリアルを抜歯窩に入れることで骨の吸収を防ぎ,骨再生も促すことができると考えられる。
即時埋入でもバイオマテリアルをスペースに入れることで,顕著に骨吸収を防ぐことが期待できる。
動物実験および臨床実験により,抜歯後に骨吸収が起こることがわかっている。
インプラントの即時埋入によって骨吸収を防げるというわけではないが,即時埋入をフラップレスで行うことによって骨吸収の度合いを少なくすることができる。さらに,即時埋入の際にバイオマテリアルをグラフトすると顕著に骨吸収が少なくなる。
なお,骨吸収の抑制においてバンデルボーンは重要ではないと考えられる。



